『犬神家の一族』と我潜水艦

私たちBlockhead Filmsの作業場であるアパートの駐車場に車を止めようとすると、なにやら慌てた様子で大家さんのおやじがすっ飛んできた。「あら、俺、なんかやらかしちまったかなぁ」と思っていると、おやじ、顔に似合わず震える声で「死んでたよぉ、部屋で・・・」。どうやら、私の部屋の斜め向かいのおっちゃんが部屋で亡くなっていたらしい。そして、そのことに誰も気づかずに十日以上経っていたのだそうだ。死因は心筋梗塞らしいのだが、ドア一枚隔てたところでそんな事が起こっていたなんて・・・。一人で亡くなるのはちょっと寂しい事だよなぁ。
アパートの話ついでにもう一つ。私が常々気にかけているのは、下の住人。ここに引っ越してから一度も姿を見た事がない。音を聞いた事も無い、それどころか夜に電気が点いているのを見たことも無い。人は住んでいるらしいのだが、その気配すら感じた事が無いのである。しかもである、ここのアパートは家賃を大家さんに直接払いに行くシステムなのであるが、そこの住人は、その親族が払いに来るそうで、本人は姿を現さないのだそうだ。さらにさらに、その親族が住人に会おうとしてもドアを開けてくれないとの事。こりゃかなりヤバイでしょ。「私はもう白骨化している死体が転がっているに違いない」と半分冗談、半分本気で大家さんのおやじに言うのであるが、おやじは岩みたいな顔をしているくせにビビッしまって部屋の住人を確認しようとしないのである。
そんなアパートであるが、住めば都。作業するには何の文句もない場所である。相棒(id:Mr-Blockhead)に「潜水艦」と称されて笑われようと、居心地は最高!夜中に少々うるさくしようとも、しょっちゅうアル中のおっさんが怒鳴り声を上げているので全く目立たない。目下の悩みは死んじゃったおっちゃんの部屋に移るか否かである。そちらの部屋の方が日当たりも良いし、広い。大家さんの達ての願いもあるのだけれど、さてどうする?おっちゃんが死んじゃったのは全く気にならないのだけれども、引っ越すのは面倒だし、安くしてくれるとはいえ家賃は上がる。う〜む。


昨日は「犬神家の一族」を観る。富司純子松坂慶子万田久子の三姉妹の迫力ある演技は素晴らしい。しかし映画ははっきりいってつまらん。なんだか中途半端で腰の据わらないカット割り、居ても居なくても関係無いんじゃねぇの金田一というダラダラした脚本。そ〜ゆうエフェクトは止めようよという画像処理。市川崑といえば、小気味良いカット割りとセンスの良い映像、テンポの良い脚本じゃなかったのか。ところどころにかつてのその片鱗は感じさせるけれど、全体としてのがっかり感は否めない。二時間半、退屈だった。正直言って最初のカットを見た瞬間からそんな不安はあったのだ。松嶋奈々子もそれほど魅力的に撮れていないし・・・。残念。